冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 でも桐人さんに愛がないとまだ決まったわけじゃないし、と自分に言い聞かせていつものように平然と返す。

「運命ってやつなんですー。ねー、やよい」
「運命ねぇ……。まあ、そういうことにしとくか」

 お兄ちゃんはテキトーに言い、しゃくっと小気味よい音を立ててりんごをかじった。

 なんとなくテレビに目をやると、ルームシェア婚をしているという芸能人夫婦が出ている。少し興味深い内容だ。

 ルームシェア婚とは、お互いの生活に干渉せず、それぞれ自由に暮らす結婚のこと。食事やお金の管理、生活時間などを別々にするので、ルームメイトのような夫婦関係になる。最近はこういうスタイルの結婚をする人たちも増えているらしい。

 出退勤も同じで、休日もトイレ以外は一緒にいるような私たちとは真逆だな……。なんてぼんやり考えていると、椅子に座ってお茶を飲む母が、にこにこして私に言う。

「またいつでも連れてきてね。目の保養になるから~」
「それは大事だよね」
「俺の前でそういうこと言わない」

 ピンクのオーラを振りまいて言う母と私に、お父さんはちょっぴり頬を膨らませていた。

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