冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

「まだあんまり食べないんです。うさぎは一日食べないだけで死んじゃうこともあるっていうから、すごく心配で……」
「そうか。そばにいてあげたらいい」

　気遣ってくれる彼の優しさが胸に沁みて、少々うるっとしながら「ありがとうございます」と微笑んだ。

　いつも通り素敵な旦那様だ……。この彼を疑うなんて、私がおかしいのかな。

　自分に罪悪感を抱き始めた時、彼は探るように私を見つめてくる。どこかゾクッとしたものを感じる、私の心を見透かそうとする瞳で。

「秋華自身は、なにも変わったことはないか？」

　そう問いかけられてギクリとした。

　なにがあったわけでもないけれど、心境の変化はあった。なんでそんなことを聞くのだろう。私の些細な異変に気づいたのだとしたら、観察眼もものすごく鋭い。

　さすがに今は正直に言えず、ほんの少しだけ目を泳がせて首を横に振る。

「私は……特に、なにも」
「本当に？　表情が暗いのは、やよいちゃんのことだけじゃない気がするが」

　勘がよすぎる桐人さんは、仕事の時と似た厳しさを感じる目をして私の頬に手を伸ばす。触れられそうになった瞬間、はっとした私は咄嗟に一歩身体を引いてしまった。