冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 彼の瞳がショックを受けたように見開かれる。私も同じく、自分に驚いている。

 スキンシップは嬉しいし、抱かれなくて寂しかったのに、まさか無意識に彼を拒絶してしまうとは……とにかく謝るしかない。

「あ……ごめんなさい! あの、本当に他にはなにもないので、心配しないでください。明日こそは帰ります、たぶん」
「たぶん?」
「いやいや絶対! 絶対、帰ります」

 ぎゅっと眉根を寄せた彼に、私は挙動不審になりながら慌てて訂正した。

 ちょっと私、なんで心の迷いをそのまま口にしちゃうかな! これじゃ桐人さんじゃなくてもおかしいって気づくでしょう。

 これ以上話しているとまたボロが出てしまいそうだったので、少々強引に話を終わらせることにする。

「届けてくれてありがとうございました! 帰りも気をつけてくださいね。おやすみなさい!」

 笑顔でぺこりと頭を下げ、「秋華」と呼び止められる声にかまわず、玄関の中へ入ってドアを閉めた。それを背にして、深く息を吐き出す。

 ……いつまでもこんなふうに避けていたらダメだ。明日帰ったら、ちゃんと話をしないと。

 初詣での発言の意味や、私の後をつけていた真相を聞いてはっきりさせようと、ぐっと手を握って心に決めた。


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