冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 でも、知られてしまったなら仕方ない。いつまでも隠せるとは思っていなかったし、嘘をついたのは事実だから私がいけない。潔く認めよう。

「……ごめん。絢の言う通り、嘘ついてた。勇気がなくて正直に言えなかったの」

 伏し目がちに謝ると、絢は気だるげに細い脚を組んでため息をつく。

「やっぱりね。ずっと怪しいなとは思ってたのよ。秋華が倒れそうになって医務室に運んでもらったって頃から、あんたが社長を意識してるのはバレバレだったし。彼は表に出すような人じゃないからなかなか確信が持てなかったけど、最近はよく目撃するんだもの。全然隠せてないわよ」

 棘のある口調で言う彼女が、イラ立っているのは明白だ。結婚してから帰る場所は同じだし、以前より一緒に出かけることが多くなったから、確かに見られても不思議じゃない。

 とはいえ、帰宅するところや車に乗るところを立て続けに偶然目撃するのは、ちょっと不自然じゃないだろうか。絢は桐人さんのマンションも知っていたということになるし。他の人にも目撃されていたら、すでに噂になっている気がする。

 違和感を覚えて黙っている間にも、彼女の敵対心はどんどん強まっていくのを感じる。

< 61 / 233 >

この作品をシェア

pagetop