冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「秋華みたいに家柄も才能も、容姿も平凡な子が選ばれるなんて到底おかしいじゃない。いったいどんな手を使ったわけ? 料理で胃袋を掴んだとか? まさか色仕かけ……は無理か」

 絢は、私の首から腰辺りをじろりと眺めて結論づけた。悪かったわね、色気が皆無で。

 失礼な彼女を据わった目で見つつ、別になにも小細工はしていないのだと訴える。

「彼のためにしてあげたいことをやっただけだよ。人並みに」
「じゃ、純粋に愛されてるって言いたいの? そんなわけないでしょ~。きっとなにか裏があるのよ。早めに別れたほうがいいんじゃない?」

 高笑いする彼女の言葉に、少し胸を抉られる。

 格差のありすぎる私たちだ、やっぱり裏があると思う人は多いだろう。私自身、まさにそれで悩んでいる最中なのだし。

 でも、関係のない人にとやかく言われる筋合いはない。対抗する気持ちが強くなってくる。

「……そうかもね。でも、私が彼を好きなのも、彼が私を選んだのも揺らぎようのない事実だから」

 自分自身がそう信じていたくて、彼女の目を見て冷静に言い放った。たとえ絢が私たちを別れさせようとしても屈しない、という意思も込めて。

 一瞬面食らったように瞠目した絢は、悔しそうに綺麗な顔を歪める。

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