冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

「仕事納めの日、同僚の子がこの辺りで私たちを見たらしくて、桐人さんがまるで私の後をつけてるみたいだったって言われたんです。旦那様がストーカー？って、ちょっとギョッとしちゃいました。そんなのありえないのに」

「ああ……確かに誤解されてもおかしくないかもしれないな。白鳥さんの行動を追ったのはあの日が最初だ。会社で明らかに秋華に敵意のある目を向けていたから、君になにかしたらと思うと放っておけなかった」

　笑い話にする私に、桐人さんも苦笑を漏らした。私ですら感じなかった彼女の異様さに気づいていたなんて、やっぱりこの人の観察力には感服する。

「俺が君のご家族に挨拶した日も彼女を見かけたから少し心配で、昨日も様子を見るついでに荷物を届けに行ったんだ」
「あ……だから『なにも変わったことはないか？』って聞いたんですね」
「そう。さすがに昨日はいなかったが、君が出勤する今日は接触してくるかもしれないと思って」

　その予想は見事に大当たりだったわけだ。すごすぎる。

　彼の話では、自分の欲しいものを持っている相手に対して、特にプライドの高い女性は事実を受け入れられずストーカー化することがあるという。〝なにか裏があるはずだ〟だとか〝自分が不正義を暴いてやろう〟と考えて、相手に固執してしまうのだと。