冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 絢もまさにそのタイプだったのだろう。あのままさらにエスカレートしていたら、厄介なことになっていたに違いない。

「本当にずっと私を守ってくれていたんですね……。ありがとうございます」
「当然だ。俺にとって、君はなにより大事なんだから」

 真剣な眼差しを向けられ、とくんと胸が優しく波打つ。

〝俺たちにとって〟じゃなく、〝俺にとって〟と言ってくれた。私は愛されていると、より確かな自信を持つために、自分の気持ちも今正直に伝えよう。

 マンションに着き、桐人さんは当たり前のように私のバッグを持って部屋へ向かう。中へ入り、リビングに荷物を置いてひと息ついたところで、私は勢いよくがばっと頭を下げた。

「桐人さん、ごめんなさい!」

 突然謝る私に、彼は驚いたように目をしばたたかせる。

「実は、桐人さんは仕事のために私と結婚したんじゃないかって疑っていたんです。その上、後をつけてるみたいだったなんて話を聞いたから、桐人さんがなにを考えているのかよくわからなくなって……。少し距離を置きたいと思って、実家にいたんです」

 決まりが悪く肩をすくめて打ち明けると、彼は眉をひそめて私の顔を覗き込む。

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