冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

「仕事のためって、どうして？」

「初詣の時、お義父様が新薬部門について話している最中、『お前が秋華さんと結婚したのはこのためでもあるんだろう？』って言っていたじゃないですか。桐人さんも認めてたから、私は研究のために必要な存在なのかも……と」

　桐人さんは思い当たった様子で一度視線を宙へ向け、ため息をついてソファに腰を下ろした。

　私も隣にちょこんと座ると、彼は「そうか……俺も誤解させて悪かった」と謝り、あの日の会話について説明してくれる。

「秋華と出会って、病気についてたくさん調べた。それがきっかけで、副作用の少ない薬を作ろうとしているのは事実だよ。父さんには結婚を反対されないように、秋華と一緒になれば研究のためにもなると主張したから、ああいう言い方をしたんだろう」

「そうだったんですか!?」

　結婚を認めてもらうために、お義父様との間でそんなやり取りがあったとは。

「父さんは気を遣わないから、君に嫌な思いをさせるかもしれない。仕事でも大事な存在だから大切に扱えと、あえて言っておいたんだ。仕事人間のあの人にはそれが一番効く」

「なるほど、そういう……。なんだ、私の早とちりだったんですね」