冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 狼ってそんなに愛情深い動物なんだ。一瞬冷静にそう思ったものの、桐人さんの情熱的な瞳にどこか陰が帯びていく。

「俺も、秋華とそういう夫婦になりたいんだ。だから、俺の秘密もすべて明かすよ」

 思いもよらないひと言に、甘い余韻が消えていき心臓がドクンと音を立てる。秘密って、いったいなに……?

 おもむろに腰を上げ、「おいで」と身構える私の手を引く。

 どこに連れていかれるのかと思えば、向かったのは書斎。桐人さんはデスクの前に立ち、本棚からあのアルバムを取って差し出してきた。

 とりあえず見ろということかな、と察して受け取る。なんとなく緊張しながらそれを捲った私は目を見開いた。

「私の写真……?」

 納まっていたのは、約一カ月前に水族館デートをした時の、私が水槽を見上げている写真。気づかないうちに彼が撮っていたらしい。

 わざわざプリントしてアルバムにしまってあることに驚きつつ、どんどん捲っていくとすぐにおかしいと気づいた。

「え……えっ? 全部、私?」

 入っているのは水族館デートだけじゃない。他の場所に行った時や、シェーレの社食で働いている姿、どれも知らないうちに撮られていた私の写真だったのだ。

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