冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 このまま一線を越えて、本当に彼が今以上に私に執着するようになったらどうしよう、と一抹の不安がよぎる。

 桐人さんのことだから、私にうつつを抜かして仕事をおろそかにするなんて事態にはならないだろうけど、会社でも溺愛するようになるのかな。行動をすべて把握しておきたいと言っていたし、束縛が強くなったりしないだろうか。

 さっきのつがいの話も、単純に一生を添い遂げようという意味なのだろうけど、その裏に依存関係になりたいという思いも隠れているような気が……。桐人さんだけじゃなく、自分自身も彼なしでは生きていけないような思考にさせられてしまったら困る。

 ぐるぐると考えているうちに服を捲られ、ブラから覗く素肌に口づけられて、先ほどと同じ痛みを感じた。

「あっ……ま、待って待って!」

 止めないと本当に至るところにキスマークをつけられそうで、咄嗟に彼の肩を押して制止してしまった。桐人さんは不安げにわずかに眉尻を下げる。

「やっぱり怖いか? ちゃんと避妊もするつもりだが、君が嫌ならやめる。無理強いはしたくない」

 安心させるように私の髪を優しく撫でてそう言う彼は、根っこの部分は本当に紳士的なのだろう。深く愛してくれているのはとっても嬉しいし、行為自体が嫌なのではないと、ぶんぶんと首を横に振る。

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