冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
彼女のためなら死ねる
正月気分が抜けてきた一月中旬の午後、この時期にしては暖かい日が差し込む社長室に、弟の頼久が資料を持ってやってきた。
自分のデスクに座ってそれをじっくりと眺める俺に、弟としてではなく臨床開発部の部長として意見する。
「改良したオープン型MRIの臨床試験結果がこちらです。これなら薬事申請に移れるレベルかと思うのですが、いかがでしょう?」
「そうですね……」
現在シェーレではいくつかの医療機器の開発や改良を行っており、オープン型MRIもそのひとつだ。俺自身もそろそろその段階だろうなと思いながら結果を確認していたが、ある部分に目が留まり「いや」と待ったをかける。
ぴくりと反応を示す彼に、画像の一部をペンで指し示して説明する。
「確かに以前より画質は向上していますが、この肩の辺りがやや見づらいですね。腱板の損傷を発見できない可能性があります。すべての病変を見逃さないMRIを目標としているのに、それでは意味がありません。改善をお願いします」
閉鎖感がなく閉所恐怖症の人でも受けやすいオープン型MRIは、トンネル型のものに比べて磁力が弱いため画質がやや粗くなるのが難点だ。そのため、わずかな異常が見逃されてしまう恐れがある。