冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「そこまで想われたら普通に怖いから。写真何枚も撮ってる時点で怖いけど」
「あれは盗撮には当たりませんよね、弁護士先生」
「そーなんだけどね!? 犯罪かどうかじゃなくて、八影さんの趣味というか性癖というかが問題で」

 フランクな口調になって率直にものを言う彼は、普段のきりっとした弁護士から妹を気にかける兄の顔に変わっている。

 秋華との交際を告げた時、弁護士の勘が働いたのか『まさか盗撮とかしてないでしょうね?』と聞かれ、俺は正直にあのアルバムを見せた。皐月くんは今より引いた顔をしながらも、『セーフですね……』と言っていた。

 勘違いしないでほしいのは、決して性的欲求を満たしたいなどという下心から写真を撮ったわけではないということ。ただただ秋華が愛しくて、彼女がそばにいない時も写真を見れば心が安らぐからだ。

「趣味でも性癖でもありませんよ。私がこうなるのは、ずっと見ていたくなるほど可愛い秋華に対してだけですから。綺麗な花を見たら、写真に収めたくなりませんか? それと同じです」
「たぶん同じじゃない」

 この部屋に飾られた、先日の創立記念でいただいた花を一瞥して微笑むと、皐月くんは複雑そうな顔で軽く首を横に振った。

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