冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 今思えば、そこで引かなかった秋華には感謝しかない。ルームメイト状態になろうと提案したのも、俺とよりよい夫婦関係を築こうとしてくれているからだ。こんなに寄り添ってくれる女性は唯一無二だろう。

 すると、皐月くんはピンときた様子でやや前のめりになる。

「もしかして、この間秋華がうちに帰ってきた時ですか? なんとなく様子が違ったんで、八影さんとなにかあったかなと思っていました。あえてなにも聞かなかったけど」
「さすが、鋭いですね。あの後から、試しにルームシェア婚を始めました」
「ルームシェア?」

 眉をひそめる彼にかいつまんで経緯を説明しながら、ふたりで話し合って決めたルールを頭の中で再確認する。

 食事はタイミングが合えば一緒にするが、そうでない時は別々に済ませ、寝室も別。できる限りしていた秋華の送迎も、大丈夫だとやんわり断られてしまった。

 本当に同じ家に住んでいるだけで、なにをするかはそれぞれという不思議な状況だ。

 確かに、秋華に対する俺の愛情は止めないとどんどん増すばかりだろう。なんでもしてあげたいし、欲しいものはすべて与えてあげたい。

 そうやって自分の欲望のままに進んでいたら、彼女をダメにしてしまうという自覚はある。

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