冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 むしろ俺は、俺がいないと生きていけないと言わせたいくらいなのだが……そういうところが問題なのだろうから、心の中だけに留めておく。

 だから、秋華が少し距離を置きたいと言った気持ちも理解しているし、承諾したのだ。ただ、それで本当に夫婦関係がよくなるのかは、一週間が経った今もまだ懸念している。

 別々の生活をしていて、もし彼女の気持ちまで離れてしまったら? それが一番恐れていることだ。

 仕事柄、いろいろな夫婦の形を知っているであろう皐月くんは、俺の話に特別驚いてもいない。

「ああ、共生婚ってやつですか。今わりといるんですよね、そういう選択をするカップル。結婚してもお互いに干渉しない関係だから気楽なんでしょうけど、最初はよくても後々トラブルになって相談に来る人もいます」

「一緒に暮らしているうちに不満が出てくることは多いでしょうね。どの形式の結婚をしても、それは同じのような気がします」

 普通に恋愛結婚をしても、うまくいかないカップルはたくさんいる。俺と秋華はどうなるのか、それは俺たち自身の向き合う努力と、お互いを思いやる心に懸かっているのだろう。

「他人が家族になるっていうのは難しいものですよねぇ……。でも、なんとなく八影さんたちは今の状況がプラスになるんじゃないかなって思います。お互いにいい関係を築こうと、あれこれ試している最中なんだろうから」

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