冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
 意外にも前向きな言葉をくれる皐月くんは、こちらに温かな笑みを向ける。

「八影さんは純粋に秋華を想ってくれているんでしょう。俺が見てきた限り歪んだ愛ではないと思うので、引き続きふたりを見守りますよ。女性社員のつきまといも、あなたじゃなければ早く気づけなかったでしょうし、最強のボディーガードでもありますよね」

 白鳥さんが秋華につきまとっていた件について、実は皐月くんに相談していた。バックに弁護士がついているというのはなにかと心強く、対処についてもあれこれ聞くことができたのでありがたい。

 あれ以来、白鳥さんはすっかりおとなしくなって、秋華にも俺にも話しかけてくることはなくなった。嵐の前の静けさなどでなければいいが、念のためしばらく注意しておくつもりだ。

「秋華に悪さをしようとする者は排除しますので、ご安心を」
「なにとは言いませんが、くれぐれも気をつけてくださいね……」

 皐月くんは口元を歪ませて忠告するも、すぐに真面目な面持ちになって俺を見つめる。

「八影さんのこと、信じてます。これからも秋華を幸せにしてくれるって」

 彼の言葉を、改めて胸にしっかりと刻む。

 皐月くんだけでなく、秋華のご両親も大事な家族を俺に託してくれたのだ。この約束は必ず守ると誓い、「もちろんです」と力強く返事をした。


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