冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

　まあ、子供じゃないのだしちゃんと用心しているよなと頷きつつも、「あまり遅くならないように」と口酸っぱく注意してしまった。

　自分でもつくづく心配性だなと呆れる。決して疑うわけではないが、俺の知らないところで男性と会っていたりしないかと気になってしまうし。こうなるのは秋華に対してだけなのだが。

「心配ですか？　本当に女子だけなのかなって」

　黙考しながらワイングラスに口をつけると、彼女が俺の顔を覗き込んで問いかけてきた。……見抜かれている。

「疑ってはいない。気になるだけで」
「それは疑ってるってことなのでは？」
「違う」

　妙な水かけ論になり、秋華は苦笑いした。そして俺の左手に両手を重ね、まっすぐこちらを見つめて言い聞かせる。

「桐人さん以外にふたりで会いたい男性なんていませんよ。私を信じて、待っていてください」

　そう言われてはっとした。干渉しすぎるのは、彼女を信頼していないことに繋がるのではないかと思わされて。

　やっぱり自分を改めなければいけないな。俺は秋華を縛りつけるのではなく、心の底から幸せを感じさせてあげたいのだから。

　細い手を取って微笑み、穏やかなキスをする。愛しさを込めて頭を撫で、「楽しんでおいで」と声をかけると、彼女も頬をほころばせて頷いた。