冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
そうして早くも一月下旬に入った土曜日、いつもの女子三人組で湯河原温泉にやってきた。雪化粧した立派な富士山が見え、レトロなお店が立ち並ぶ温泉街はとても風情がある。
和奏たちと温泉に入るのは初めてで、ちょっぴりドキドキしたけれど入ってしまえば極楽だ。
ちょうどいい湯加減で、素敵な景色が望める露天風呂にゆったり浸かりながら、私はふたりが聞きたがっていたここ最近の驚愕のエピソードを話した。
衝撃的な事実のオンパレードにふたりは目を白黒させたり、のけ反ったりと大きなリアクションをするので面白い。すべて打ち明けた今、和奏が片手で目元を覆って天を仰いでいる。
「アカンて……あの八影社長が……まさかのヤンデレやったなんて~!」
「それ言わないようにしてたのに」
数々の病み気味な発言を聞いて、私も思っていたけれども。ここだけの秘密だと念を押すと、ふたりは「「なんとなく言えないから大丈夫」」と声をそろえた。
色白で綺麗な肩にお湯をかけながら、いまだに呆気に取られている麗さんが言う。
「同性のストーカーにもびっくりしたけどね。深刻な事態にならなくてよかったよ」
「ホンマやで。まあ、おかげで社長との関係も公にできたし、本性も知れたし、ええきっかけになったんとちゃう?」