冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました

　和奏の言う通り、お正月休みを終えたシェーレでは、私と桐人さんが結婚している事実が大ニュースとなってあっという間に広まった。

　おそらく絢が誰かに言ったのだろう。あれ以来、彼女の姿は社食では見ていない。

　会社での桐人さんは相変わらず冷徹なイメージを崩さず、私とも以前と同じテンションで話している。プライベートとはまるで別人と接しているような感覚になるけれど、皆の前であの本性を出されなくてひとまずほっとしている。

　恋愛にまったく無関心そうで、滅多に笑みを見せない仕事人間の桐人さんもやっぱりカッコいい。でも、私の前でだけ重すぎる愛を露わにする彼も、実はちょっと癖になりそうな魅力があるのでいけない。

　ルームシェア婚を試しているのは、日常生活に支障が出そうなほど深い愛の沼に、自分がハマりすぎないようにするためでもあるのだ。

　結局私も桐人さんが相当好きってことよね、とぼんやり考えていると、それを読み取ったかのごとく麗さんが口を開く。

「そこまで激重感情を向けられたらちょっと引いちゃいそうな気もするけど、嫌にならなかった秋華ちゃんは本当に彼が好きなんだね」
「あはは、ですね。他の人だったら引いてたかも。桐人さんだからよかったんです」