冷徹御曹司の旦那様が、「君のためなら死ねる」と言い出しました
「私も顔のいいヤンデレは大好物やで」

 ニヤッとして口を挟む和奏に「だから、ヤンデレって言わない」と注意しつつも、確かにビジュアルも大事だよなと正直思ってしまった。

 けれど一番は、彼が私を大切にしてくれているかどうかだ。

「ちゃんと愛されてることがわかって、ほっとした気持ちのほうが大きかったんだよね。いろいろ悩んでたから、理由がわかってすっきりした。紳士的で完璧なだけじゃない部分を見せてくれて、自分も素を出せるようになったし」

 そう。距離を取り始めて、改めて自分を見直すこともできたような気がしている。

「今までは彼に釣り合うようにしなきゃとか、嫌われたくないって思いが強くて、気を遣いすぎてたんだってわかった。こうやって夜に出かけるのも、なんとなく悪い気がしてできなかったし。旦那様の彼を優先するのは当たり前なんだけど、遠慮しすぎてたなって」

 私が勝手に気後れしていただけなのだが、完璧な彼に合わせようと多少無理をしていた。

 本当は忙しい時も食事は手作りにして、お風呂も彼の様子を窺って時間をずらし、逆に寝る時はどんなに眠くても彼と同じ時間にベッドに入っていた。よき妻でいようと猫を被っていたところもある。

「でも今は、本音を言えるようになったし自然体でいられる。なんか、結婚生活がすごくラクになったかな」

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