借金の向こう側

秘密

秘密

消費者金融を訪れていた理由は、実家の経済的困窮を支えるためだった。大輝の父親はかつて中小企業の経営者だったが、事業が失敗し、多額の借金を抱えることになった。家族の生活は困難を極め、母親は長年のストレスで体を壊し入院。家族を守るために奨学金を使い切り、さらに自ら借金をして生活費や医療費を工面してきたのが大輝だった。
「誰かに頼るなんて格好悪いだろ。だから、誰にも言えなかった。」
大輝の言葉には苦しみと諦めが滲んでいた。
「でも、こんなこと知られたら、俺なんかが福祉の現場で働いてる資格なんてないと思うだろ?」
そう言う彼の姿に、陽奈は胸が締め付けられるような気持ちになった。
「そんなことありません!」
陽奈は強い口調で大輝を遮った。
「誰だって悩みや辛いことを抱えてるんです。それに、佐久間さんがここで頑張ってるのは私たち皆が知ってます!」
彼を支えたいという気持ちが、言葉となって自然に溢れ出ていた。大輝は驚いた表情で陽奈を見つめた後、少しだけ柔らかな笑みを浮かべた。
「……ありがとう。変な話を聞かせて悪かったな。」
その日を境に、二人の関係は少しずつ変化していく。陽奈は、大輝の抱える現実を理解しながら、彼を支えようと決意を固めた。大輝が背負う「消費者金融」という過去は、彼のプライドを傷つけるものでありながらも、彼が家族を想う深い愛情の表れだった。その事実を知った陽奈は、彼の力になれる方法を模索していく。しかし、二人を待ち受けるのは、単なる借金問題ではなかった。
家族との確執、病院での職場トラブル、そして二人が引き寄せられるように直面する過去の事件――。
彼の「真実」を知るたびに、陽奈の心は揺さぶられ、二人の絆はさらに深まっていく。しかし、その過程で二人が選ぶ未来は、決して平坦なものではないのだった。
「消費者金融」という真実をきっかけに始まった二人の物語は、これからどんな結末を迎えるのか――。
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