借金の向こう側

結末

結末

佐久間大輝と陽奈の関係は、様々な困難を乗り越えた末に、ようやく穏やかな日常を取り戻しつつあった。消費者金融から借りたお金はすでに返済を終え、大輝の家族の生活も安定し始めていた。しかし、二人の間にはまだ言葉にされていない「未来」への選択肢が残されていた。冬の冷たい風が吹く午後、二人はカフェで静かに向き合っていた。窓の外には雪がちらつき、柔らかな陽光が差し込んでいる。陽奈は両手で温かいコーヒーカップを包みながら、ゆっくりと大輝に話しかけた。
「佐久間さん、これからのこと、少し話せるかな?」
大輝はその言葉に軽く頷いたが、目を伏せたまま口を開こうとはしなかった。陽奈はそんな彼の様子に気づきながらも、穏やかな声で続けた。
「お金の問題も片付いたし、家族のことも少し落ち着いてきたよね。それでも、佐久間さんがこれからどうしたいのか、ちゃんと聞いておきたいの。」
彼女の真剣な眼差しに、大輝は少しだけ口元を緩めた。深く息をつき、ようやく重い口を開いた。
「……俺、もう少し頑張ってみようと思うんだ。家族を支えるのもそうだけど、福祉の現場で働く意味を、もっとちゃんと自分で見つけたい。」
彼の言葉には、以前とは違う力強さがあった。陽奈はその言葉に安心しながらも、少しだけ不安を抱えていた。
「じゃあ、私はどうすればいいのかな?」
大輝は陽奈の問いに、一瞬戸惑いの表情を見せた。陽奈は続ける。
「私は、佐久間さんと一緒に歩んでいきたいと思ってる。けど、佐久間さんの気持ちを聞かないと、私一人で決められないよ。」
その言葉に、大輝はしばらく黙り込んだ。窓の外をぼんやりと見つめた後、彼はゆっくりと陽奈の方を向き、真剣な目で答えた。
「陽奈、俺はお前に頼りきりになるのが怖かったんだ。俺なんかが、お前の隣にいていいのかずっと迷ってた。でも……今は思う。お前がいてくれたから、ここまでこれたんだって。」
陽奈の目が潤む。彼女は言葉にならない感情を抱えながら、大輝の言葉を待った。
「だから、これからも一緒にいてほしい。俺はお前と未来を作りたい。」
その言葉を聞いた陽奈は、抑えきれない涙を流した。そして、彼の手を強く握りしめた。
「佐久間さん、ありがとう……本当にありがとう。私も、一緒に未来を作りたい。どんなに大変でも、佐久間さんとなら乗り越えられる気がする。」
二人はその場で静かに見つめ合い、ゆっくりと微笑み合った。外の雪は少しずつ激しさを増し、真っ白な世界を作り出していたが、二人の心には温かな光が灯っていた。
数年後、大輝と陽奈は新たな人生を歩んでいた。大輝は福祉の現場でリーダーとして働き、多くの人々を支える存在となっていた。一方の陽奈は彼を支えつつ、自分自身のキャリアを築き上げていた。ある日の夕暮れ、二人は家の窓辺で並んで座り、夕焼けを見つめていた。陽奈は小さな笑みを浮かべながら、ふと大輝に尋ねた。
「ねえ、佐久間さん。あの時、私たちが出会っていなかったら、どうなってたと思う?」、大輝は少し考え込んだ後、笑いながら答えた。
「それでも、きっとどこかで出会ってたんじゃないかな。俺たちは、そういう運命だったんだと思う。」
陽奈はその言葉に嬉しそうに頷き、窓の外を見つめた。その先には、二人で描く未来が広がっていた。
「たとえどんな困難があっても、二人でいれば乗り越えられる。」
そう信じながら、二人は手を取り合い、これからも続く日々に思いを馳せた。

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