君は恋に眠って
遼は、母親が弁護士だ。だから──というと語弊があるけど──遼の兄は弁護士になるのだろうか。遼はともかく、あの兄はいつもへらへら女の子と遊んでいるイメージしかない。そう考えると不思議な気はしたけれど、遼だって「弁護士かなぁ」と将来のことをぼやいていることがある。その疑問のような呟きに隠れた真意を問いただしたことはないけれど、二世なんてそんなものなのかな、とも思う。じゃあ二世じゃない人は──と考えると、頭にはサークルの先輩が浮かんだ。
「そういえば先輩がそんな話してたなぁ……」
「あぁ、法学部の先輩いんの?」
「うん、ちらほら。ま、お前といい、法学部の知り合いが増えるといいよね。将来助けてもらえそうで」
「どーだか。弁護士になるヤツばっかとは限らねーぞ。あ、フランクフルト」
犬が尻尾を振る様子でも見えるようだ。ひょいひょいと目当ての屋台に近寄っていく背中をのんびり追いかけて、ぜんざいを食べながら当たりを見回す。
ステージでは有志らしき学生が躍っていた。歓声と人混みで様子も何も分からないけど、盛り上がっているのだけは分かる。ステージ客の手前に三日分の演目もあって、バンドの演奏やらミスコンやらダンスやら、とにかくお祭り騒ぎにお誂《あつら》えむきの発表が目白押しだ。