君は恋に眠って
「どうする? 先に買う?」
「んー、多分兄貴も顔出すつもりだったんだろうし、兄貴と合流してからでいんじゃね」
「そうだねぇ」
ぜんざいもフランクフルトも食べ終えて、ごみ箱を探しながら歩いていると、メインストリートから逸れる脇道があって、そこでごみを収集していた。学祭委員らしきネームプレートを付けた人に指示されるがままに紙のボウルと竹串を捨てる。都合のいいことにそこが図書館前、人混みで歩きにくいと想定したわりには早く着いた。
「兄貴呼び出すかぁ」
「嫌そうだね」
「だってアイツ、絶対道行く女子に声かけまくるぜ」
遼の兄は自他ともに認める女好き。その反動のようにコイツは女子に奥手で真面目だというのは余談だけど。
「まー、だろうね。でも学祭なら需要と供給が一致することも多いんじゃない」
図書館に着くまで、コスプレをした女子が何人か声をかけてきた。もちろん、その片手には手作りポスター、もう一方の手にはチケットだ。女の子大好きなあの人なら喜んで買うだろうし、女の子側も売り上げが増えて嬉しいだろうし。
「生憎、俺は自分の要るもの以外買う気にならないけど──」
「まーつたか!」
不意に背中を叩かれて、驚いて振り返る。その瞬間に肩を組まれた。