君は恋に眠って
「え、今期最大にびっくりした! マジかよ、雪斗と総くんが知り合いとは思わなかったわ! 世間狭いな! あ、コイツ、高校の後輩なの。一個下」
だからなぜそこで叩くのが俺の背中なのか。先輩はひょいと俺の肩から腕を外し、遼に向き直った。
「名前聞くまで弟さんとは分かりませんでしたよ。似てないですね」
「あー、よく言われるよく言われる。俺は母親似なんだけど、弟は父親似なんだ」
「先輩と違って真面目そうですねぇ」
「失礼なこと言うなよ、そうだけど。で、何、お前一人で来たんじゃないだろ?」
「当然。後輩見かけたから声かけに来たらついでに先輩の弟さんもいたってだけです。ていうか先輩、いま入試じゃないんですか?」
「そーなんだよね、来週から二週連続なんだよね。嫌になる」
それなら今から俺達と学祭で遊ぶべきではないのでは? 俺(と多分遼)はそう思ったけど、口には出さない。
「でも余裕でしょ」
「余裕じゃねーよ。お前も来年こうなるんだからな」
「僕は余裕なんで。じゃ、また年末お会いしましょう」
大学が同じ俺には「じゃーな、また来週」と軽い挨拶をして、先輩は彼女のもとへ戻っていった。帰省で必ず会う約束をするなんて、よっぽど仲が良いらしい。