君は恋に眠って
「お前何歳だよ。いい加減遊ぶのやめろよ」
お陰で、三つも年が離れた弟にまで言われる始末。メインストリートを外れて、少し人が少ない場所で焼き鳥を食べながら、彼方兄さんは肩を竦めた。
「今日くらいいいじゃん、可愛い弟が二人いるんだから勉強なんかしてる場合じゃない」
「俺、彼方兄さんの弟になった覚えはないんだよね」
「つかその遊びじゃねーよ、彼女一人に絞れって言ってるんだよ」
「違うでしょ、一人には絞ってるけど長続きしないんでしょ」
「あー、そうだそうだ。彼女がいるのに他の女子にも優しくするから……」
「女は他の女子より自分を優先してほしいものなんだから。博愛主義は彼女の前では厳禁だよ」
立て板に水のごとく説教を浴びせていると、「そんなの分かってるよー」と飄々とした返事をされる。その態度に呆れたのか、話題に興味を失ったのか、遼は「トイレ行ってくる」といなくなった。が、建物の入口で早速女子に絡まれている。あの有様だと中々戻ってくることはできないだろう。
「アイツ痩せたなぁ」
「そう? 別に分かんないけど」
「最後に会ったの春だからかな?」
「夏に会ったときからは変わらないけど」
「あ、桐椰せんぱーい」
そしてまた、後輩だ。この数十分だけで一体何度目か、今度はメイド服のコスプレをした女子二人が揃って彼方兄さんに駆け寄ってきた。