君は恋に眠って

「おひさしぶりでーす!」

「おう、久しぶり」

「先輩の友達ですか? え? え? めっちゃイケメンじゃないですか!? 顔綺麗すぎません!? イケメンの隣にはイケメンしか立てないんですか!? 類友ってそういう意味でしたっけ!?」


 彼方兄さんがいれば大体自分は二の次にされるのだけれど、女の子の一人はテンションに任せた誉め言葉をまくしたてた。


「な、コイツ顔綺麗よな。でも俺の弟の幼馴染なんや、友達っていうか弟みたいなもん」


 その後輩のイントネーションのせいか、彼方兄さんの口調が少し変わる。


「な!」

「だから弟になった覚えはないんだよね」

「声かっこよ! えーいいなー握手してください」


 理解できないテンションだったので、差し出された手を握りながらも苦笑いしてしまった。自分が一回生だということを踏まえると、年上か、少なくとも同い年のはずなのだが。それはともかくとして、その彼方兄さんの後輩は俺との握手後は彼方兄さんに向き直った。


「先輩、もう焼き鳥買いました?」

「買った買った。ちゃんと貢献してきたから許して」

「えー、私から買ってくださいよー。私と先輩の仲じゃないですかー」

「そこはさえちゃんが俺に真っ先に会いに来てくれんと」

「そんなー」

「というわけで、俺以外のヤツに売ってきて。打ち上げで会おうな」

「ざーんねん。失礼しまーす」


 一言も喋らない友達を連れ、その“さえちゃん”とやらは俺達に会釈をして立ち去った。彼方兄さんはその後ろ姿ににこにこしながら手を振っている。

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