君は恋に眠って
 今だってそうだ。机の上に視線を戻せば、あるのはホットコーヒー。ついこの間まではアイスコーヒーしか頼まなかったし、冷たくなくなる前にすぐに手を伸ばしていた。それなのに、今となっては迷わずホットコーヒーを頼むようになったし、温かい程度になったカップは、こうして両手で包み込むと暖を取るのにちょうどいい。まさにぬくもりと呼ぶべき温かさが心地よくて、ほう、と一息つき、やっと一口飲んだ。


「悪い、待たせた」


 そんなタイミングで待ち人が現れるものだから、「ん」と短く答えるだけになってしまった。それでも、幼馴染となれば慣れた態度と言わんばかりで、気にする素振りもなく座るだけだ。


「久しぶりだな、(そう)

「久しぶり、ってほどでもないはずなんだけどね」


 夏休みに帰省で会ったんだから。そう付け加えたけれど、久しぶりに感じたのは事実だ。いかんせん、去年までは毎年毎月毎日顔を合わせていた関係。会うたびに季節が一つ変わる、たったそれだけの間隔を妙に長く感じてしまう。


 そう、季節が一つ変わる。目の前では「ホットのカフェラテお願いします」なんて遣り取りも聞こえて、可笑しくて笑ってしまった。この間会ったときはコイツも冷たいジュースを頼んでいたのに、と季節を感じさせられて、つい。

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