君は恋に眠って


「いつから大阪来てるの?」

「金曜から。お前は学祭ねーの?」

「うちは月末だからね。そっちは?」

「俺も月末。あんまでかくねーけどな」

「まぁ、学生の数少ないとそんなもんじゃない。単純計算半分以下でしょ、理系がないんと」

「そうだなぁ。こっちは商学部はあるけど、そっちは総人あるし……って考えると、まぁ半分以下か」

「少なくともキャンパス内に理系がいないのはいいと思うけどね。アイツらとにかく規模が大きくなるからキャンパスも広くなって、移動が辛くて仕方ない」


 そんな話をしているうちに電車が一本通過したのだけれど、遮断機は持ち上がろうとしない。駅のほうへ視線を移せば、「梅田 普通」の阪急電車が止まっている。これまたやっぱり動く気配はなく、漸く動き出したかと思えば、トロトロなんて擬態語がぴったりくる鈍さ。遮断機が上がる頃には、待ち人の渋滞が起こっている始末。


「……長くない?」

「タイミング悪いとな。兄貴がこっち側に住んでるんだけど」


 こっち側、というのは商店街側のほうだ。


「朝、一限の英語があるときに引っかかるとやばいってよく言ってた。坂道ダッシュする羽目になるからって」

「あぁ、すごい目に浮かぶ」


 幼馴染の兄となれば、それだけで表情から行動まで容易に想像できてしまう。遮断機が降りてしょげかえり、あまりに上がらない踏切に段々と困惑し、踏切が上がってから仕方なさそうに走り出す。思わず笑ってしまった。

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