君は恋に眠って
「ていうか、坂道ダッシュって。坂道っていうか整備された山じゃん」


 そして、これから目指す学祭が行われている浪速大学は山の上だ。平地上の大学に通っている俺達としては、揃ってげんなりするしかない。


「前言撤回、寒いくらい涼しくてよかった。夏日だったら絶対汗かいてた」

「だな。実際夏はしんどいらしいし」

「楽な道ないの?」

「反対側なら車で行ける」

「ないと同義だね。こんなことのために車借りるのもタクるのも馬鹿馬鹿しくてやってられない」


 整備されたこのコンクリートに影を落とすのが、せめて紅葉なら、いい散歩道程度には思えたかもしれない。ただ、残念ながら常緑樹ばかり。人工的に選択したのだとしたら、見栄(みば)えより清掃の手間を優先したせいだろう。そうなれば仕方がない。


「ていうか、大阪はあんまり景色変わらないね」


 京都に住んで半年も経てば、すごく四季を感じやすい街だと思う。少し歩けば神社仏閣が多いせいかもしれないが、なんとなく街中を歩いてるだけでも季節の変化が分かる。自分が和菓子屋をよく覗くせいかもしれないけれど、きっとそれだけのせいではない。やっぱり、足を延ばすまでいかない距離に、優しい自然の色があるから、町全体が無意識にその色に包まれているような気がしてしまうのだろう。

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