君は恋に眠って
「あー、暖かい」
「少しくれ」
「ん。で、件《くだん》の鯛焼きは? あ、小豆だらけだから焼き鳥のほうにするか」
「あ、待って、兄貴からLIMEきてた」
渡した端からぜんざいのボウルを返された。白玉を食べながら隣のLINEを覗き込むと「図書館いる」と表示されている。
「図書館ってどっち?」
「確か……このメインストリートの中盤くらい」
「中盤……別にメインストリート通らなくても行けるんでしょ?」
「あー、そうだな、確かメインストリート入る前のとこ右に行けば……」
「一回戻って迂回したほうがいいんじゃない? 待たせるでしょ」
「いや、勉強してるだけでまだ出てないっぽい。図書館前来たら連絡くれって言ってるから」
「あの人勉強するんだ……」
幼馴染の兄となれば、中学高校とのらりくらりと遊んでいたことも知っている。それが大学生になって突然勉強を始めるわけがない。机なんて粗大ゴミ行きにしたのだとばかり思っていた。いや、根が真面目なのは知ってるけど、それにしたって。
「んー、最近ちゃんとやってるらしい。院試受けるんだって」
「院試? 文系なのに珍しいね」
「なんか試験落ちたらしくて、弁護士なるんだったら院行かないといけないんだって言ってた」