パーフェクト・フィグ
#1."君は、誰?"
アパートのエントランスに、
大袈裟に吊り下げられた巨大シャンデリア。
その下を、段ボールを抱えながら
本日何度目かの往復をする。
深夜に引っ越しを請け負ってくれる
引っ越し業者が空いていなかった今日。
藤原雅俊は、帰国日をこの日に決めたことを
酷く後悔した。
アメリカから届く荷物と、
前のアパートに置きっぱなしにしていた物、
電化製品は店から直接届くとして…
頭の中で色々と整理しながら、
重い段ボールを2つ抱えてエレベーターを降りる。
新たに越してきたアパート・ソレイユは、
正確にはデザイナーズマンションであり、
家族も多く住んでいる。
それは事前に不動産屋から聞いていたが…。
雅俊が部屋に荷物を入れて、
再び車まで戻っていると、
一人の女性がふらふらと歩いてきた。