パーフェクト・フィグ
2人の会話を聞いていたのか、
ベテランである外回り看護師が
会話に混ざってきた。
「藤原先生!お久しぶりです~!」
お久しぶりなことに驚いたが、
雅俊は小さく会釈した。
「すみれちゃんね、
先生は初めて見るわよね」
「そうですね」
あの女医はどうやら、
伊東すみれというらしい。
目元しか見えなかったが、
看護師がそう呼ぶということは
やはり若手なのだろう。
松島が雅俊の考えを察してたように言った。
「ああ見えて、大阪で
バリバリやってたらしいですよ」
「大阪か」
「和久田教授って知ってます?」
「あぁ」
大阪の心臓外科医の名誉教授である
和久田教授を知らない医療者はいないだろう。
「すみれ先生は、和久田教授のもとで
下積みを積んだ叩き上げなんですって」
松島まで下の名前で呼ぶことに引っかかったが、
いちいち突っ込むのも面倒なのでやめた。
「まだ若く見えるが、やり手なのか」
「うちの小児心臓はあの2人で
もってるようなものなのよ」
ベテラン看護師がそう言うと、
手洗いを終えたすみれと梶木が戻ってきた。