パーフェクト・フィグ
外科医の準備が整ったところで、
梶木が「タイムアウト」とか細い声をかけた。
「梶木です」
「伊東です」
「麻酔科、松島です」
「藤原です」
「器械出し、細谷です」
「外回り、遠藤です。
患者さんの紹介、お願いします」
「荒井ベビー、生後3日、女児。
ファロー四徴症のVSDに対して…」
普段は下の人間が言う患者紹介も、
なぜか教授が進めていた。
「…以上です。お願いします」
手術がスタートし、
人工心肺を回すまでの勝負が始まった。
本来、ファロー四徴症の手術は
早くても生後半年から手術をするが、
今日の子は横隔膜ヘルニアを併発している。
そのため、生後3日という
生まれたてでの大手術となったのだろう。
「新生児の心臓は、
饅頭より小さく、
豆腐より柔らかい。
少しのミスの少量の出血も
命取りになることがある」
それだけ外科医の手技が問われる。
雅俊は、松島に小声で説明しつつ、
麻酔科医として必要な知識を伝えた。