パーフェクト・フィグ
雅俊は女の首に手を当てた。
総頚動脈の鼓動と、
胸郭の動きを確認して、
一先ず生きていることはわかった。
ここに入れたということは
この階の住人であるのだろう。
だが、少なくともこのドアの部屋、
807号室の人間ではない。
力尽きたか、転んで頭を打ったか。
色々と考えられる要素はあるものの、
とにかく邪魔であることに違いはない。
雅俊は女の肩を軽く叩いた。
「おい…」
もちろん、反応はない。
ふわふわとした長い癖毛は、地毛だろうか。
ほんのり香るシャンプーの香りは、
なんとなく知っているような気がした。
白人のように白い頬に、
そばかすがやや目立つ。
薄い唇はピンクを帯び、
酒の匂いがしないことから、
酔っているわけではなさそうだ。