パーフェクト・フィグ
玄関に座らせてから明かりをつけると、
その刺激でか、女は眉間に皺を寄せた。
それからゆっくりと目をあけると、
これまた色素の薄い大きな黒目が
雅俊を捉えた。
雅俊は誤解のないよう
なるべく距離を取って言った。
「起きたか」
いい迷惑と思う反面、
目を開けてくれたことにほっとした。
何も言わず見上げてくるその顔は、
やはり人間離れした人形のようだ。
猫のような形をした薄い唇が
ゆっくりと動いた。
「…起きた」
意外にも大人びた声だ。
見た目からもっと幼いかと思ったが、
どうやら声帯はそうでもないらしい。
「それなら、帰ってくれ」
「ここは?」
「ソレイユの807号室。
俺の家の前で、あんたは寝ていた。
邪魔だったし誰か来たから
仕方なくここに入れただけだ」
「807…私、808」
やはり隣か…
雅俊が狙っていた角部屋は、
このよくわからない女が手にしていたらしい。