青の先で、笑っていて。

プロローグ

月がきれいな夜だった。

公園のブランコに腰かけ、ひとり明日の夜空を想像しては大きなため息をつく。


あぁ、もう…

もう、私には、

なんもないんだな…。


そう思ったら溢れるはずの生ぬるいものさえ生まれない。

空っぽ。

ほんと、それだけ。

昔からそうだった。

泣かない子、

泣けない子、

可哀想な、子…。

変に真面目で頑固で我慢強くて

嫌なことがあっても

嫌なことをされても

それで悲しくなっても

それで虚しくなっても

涙なんて出なかった。

こういう時素直に泣けたなら、

たぶん今こんな風にはなっていないんだろう。

ひとりぼっちでも、なかったんだろう。


なんでこんなことになっちゃったのかな…?


疑問符が頭の中にびっしり埋まってぐるぐると鈍く回転する。

疑問符同士がぶつかり合って、その衝撃のせいか、頭痛が酷くなってきたように思う。

家に帰って休みたい。

けど、帰宅しても待っているのは地獄だ。

ならば、ここでこうしていた方がマシ。

気の済むまでここにいよう。


あぁ、きれい…。


月だけは、きれいだった。

私のことを優しく照らしてくれていた。

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