青の葉の、向かう明日。

本当の、きもち

学校での立場は相変わらず最悪なまま冬休みが始まった。

通学という苦痛から逃れられたお陰で発作もない。

あの日以降、というかそれよりも前から彼はずっと私の傍にいた。

おはよう、から、また明日、まで。

ずっと、だ。

有言実行の良く出来た人で、見かけによらず成績も良い。

金髪なのは教師への反抗なのかもと思ったけれど、そうでもないらしいし、

ならばその髪色の意味は何なのだろうと考えてはいるものの、答えも浮かばなければ本人に聞くことも出来ていない。

世間話のひとつやふたつ普通にするくらい距離は縮んだのに。

そもそも私と清澄くんの関係はゼロ距離から始まったともいえる。

自然と馴染んで、今ではもう日常と化した。

彼のおはようも、

また明日、も、

私の一部になってしまった。

そんな当たり前が壊れるのは、もう嫌だ。

理由はともかく私の味方になって、ちゃんと側にいてくれる清澄くんが離れていったら…なんて想像をするだけで寒気がする。

季節が確実に冬に移り変わり、外気温が下がったからじゃない。

得たものを失う怖さからくる身震いなんだ。


「さむっ…」

「どうした、ありす?寒いのか?」

「別に。これくらい何ともないです」


塾からバス停までの道のり。

隣を歩くのは、清澄くんで、

私は彼の先を行けるよう急ぎ足で向かう。


「ありす、ちょっと待って!」


なぜか私をありすと呼び始めた彼。

あの日以降、ありすが定着してしまった。

私のもうひとつの名前をなぜ彼が知っているのか、

それともたまたま降りて来たのか、

それさえも私はまだ聞けていない。

1番近くにいるのに、聞けていないことばかりだ。

なんでって聞かれても、

なんだか触れない方が良い気がして…

そう答えるしかないのだろう。

触れてしまえば、

近づいた気になって、

遠ざかる気がするから。

今はこの距離でいい。

私が一方的に恩恵を受けているだけに見えるけど、

とりあえずこのままで。

いつか必ず恩は返すから。

どうか触れずに

ただ隣で日常を繰り返していて。

それだけで私は安心するから。

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