青の葉の、向かう明日。
「ありす、デートしよ」

「えっ?」


追いつかれたと思ったらあっという間に私の前に立ち、意味不明な日本語を繰り出して来た。


「付き合ってもいないのにデートなんて…」

「んじゃあ、付き合って。今日だけで良いから」


彼はそう言うと私の右手をぐいっと引っ張って走り出した。


「ちょ、ちょっと!止まって!」

「止まらない。だって今日はクリスマスだもん。勉強だけじゃつまらない。クリスマスらしいことしようよ、一緒に」


彼の背にかける言葉など思いつかなかった。

たぶん何を言っても聞かないから。

関わらないでとあれほど言っても聞かなかったから。

ならば仕方がない。

その言葉通り、傍にいてもらうしかない。

私はそんな彼が、

私の傍から離れないように、

私の前から消えないように、

ただ見ているしかない。


私の歩幅に合わせながらも、少しずつ加速していく。

人通りが多くなる。

街の灯りが増えていく。

イルミネーションに彩られた街が、

ひたすらに美しい。

赤、オレンジ、黄色、

あっちは青と紫…。

こんなにも鮮やかな景色があったんだ。

机に齧り付き、参考書と睨めっこの毎日では確かに気づかない。

見過ごしてしまったことがこの他にもあるのかもしれない。

ならば、今ここで

彼に教えてもらったなら、

それは感謝しなければならない。

たったひと言伝えるだけでいい。


「ありがとうございます」

「何改まって?まぁ、ありすが喜んでくれるならそれが一番だけど」

 
彼は笑ってくれるから。

私の言葉ひとつで

こんなにも眩しい笑顔を見せてくれるから。


「あ!あっちもきれい!行こ、ありす」


握られた手のひらがほの温かい。

伝わる熱で分かる。

あなたはすごく優しい人。

だからどうか…幸せで。

この先私を見離したとしても、

その先でただ笑ってくれたらそれでいい。

ううん、それがいい。

なぜか私の味方になってくれたあなたに心の底から願うよ。

聖なる夜に願う。

こんな私を救ってくれたあなたに

誰よりも大きな幸せが訪れますように。


< 14 / 22 >

この作品をシェア

pagetop