青の先で、笑っていて。
私の歩みが遅くなり、チャンスと思ったのか相手が話し出す。


「関わるなって言っておいてそんな顔はないと思うけど」

「そんな顔ってどんな顔ですか?だいたい、私とあなたは面識はあっても一度も話したことがないじゃないですか?本当は興味ないくせに、弱ってそうだからって気安く話しかけないでください」


優しくされたからって、簡単に靡くような私じゃない。

そう、思ってる。

なのに…

捉えられた私の瞳を映す相手の瞳の眩さに胸がぎゅうっと締め付けられる。


「んじゃあ…」


言いながら今までの言動が嘘だったかのように、呆気なく相手は私の手にスマホを戻した。

手元に戻り、ほわっと灯った液晶画面を見つめる。

私はまた盗られまいとぼーっとしかけた脳を叩き起こし、慌ててスマホをスクバにしまった。

そして、相手の顔色を伺おうと顔を上げた、その時。


「あんたと…」


…ん?

……えっ?

………ちょ、

ちょっと、待って。

今の、

今の、何?


脳の処理が追いつかない。

今の…

今の…感覚って…?


「キスした関係」


…は?

い、今、なんて言った?

き、きき、キス…?


相手が慌てふためく私を見てケタケタ笑ってる。

こっちはあんなことやこんなことがあってパニックになって憔悴しきって、

その後に…え?

もう、なんなの…?

ひとしきり笑いこけた後で相手は言った。


「もう立派な関係者。おれとあんたはキスした仲。…ってことで、無視とかなしだから。家、教えて。送ってく」


こうして、私と金髪の彼…清澄朔との奇妙な関係が始まってしまったのだった。
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