王子様のないしょ話 ~僕は初恋の彼女を溺愛する
 それがある時、パレードがあった年から数年経ってからのことだったが、僕は彼女たちの秘密を知った。

 彼女たちの存在意義=『シンデレラの予備』だったのだ。


 公募してシンデレラに決定した少女は、最初から僕の妻になることを前提に応募してきたのだろう。でも決定した時の年齢を考えれば、本人がそれをわかっていて自薦したとは、つまり自分で僕の妻になることを選んだのだとは思えない。

 実際初めて会うのは舞踏会の場面だ。その時になって、お互いに結婚相手としてこの先の人生を共に暮らすことは出来ない、と判断することも考えられる。

 そして、物語がそこまで進んでしまったあとで「この相手と結婚したくないから、お話をストップします」とは言えないのだ。

 その場合を見越して、直接何度か接触をもつことのある《親衛隊》のメンバーから、僕が(結婚してもいい)と思う娘を選び、シンデレラとして結婚するという段取りだ。

 すべては物語のため。

 わかっている。
 わかっている、が。

 なんてことをするのだろう、というのが僕の正直な感想だ。

 物語の登場人物は、自分たちの気持ちや人生を、犠牲にしなければいけないのか。
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