王子様のないしょ話 ~僕は初恋の彼女を溺愛する
 じいが居住まいを正し、僕の目を見て話しだした。

 これは、とても大事な話をする合図だ。僕も姿勢を正して、じいの目を見る。

「この世界は、《童話》を読む"よい子"のために存在する世界です。お話の筋にそって、そこからはみ出さないよう、生きなければいけない世界です。その為には、時にしたくないことをしなければならなかったり、したいことが出来なかったりする人々がいます。悪役と呼ばれる人たちは、その最たる存在でしょう」

「うん」

「王子様もまた、自分の自由にはならない人生を、これから歩まねばなりません。だからこそ、色々な立場にある人のことを理解し、広い視野を持たなければいけません」

「……うん」

「今はまだ、じいの話が全て理解出来てはいらっしゃらないでしょう」

「ん――……うん」

 じいがフフっと笑う。僕も笑った。

「でも、いつかきっと理解される時がくるでしょう。どうか、心の広い素晴らしい国王様におなりになってください」

「……はい!」
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