王子様のないしょ話 ~僕は初恋の彼女を溺愛する
 この時じいが教えてくれたことは、何年も経って僕のシンデレラ(・・・・・)に会った時、本当に役に立った。

 僕が恋した相手はシンデレラをいじめる義理の姉、ジャボットだったのだから。

 僕はこの日のじいの言葉を、繰り返し繰り返し、思い返して心に刻み付けた。
 だから、彼女がジャボットであると告白し、逃げようとした時すぐにその手を(つか)まえることが出来たのだ。

 あの時のジャボットの表情から、彼女や彼女の母親が、それまでどんな目に合ってきたのか、すぐに想像がついた。

 もしじいから説教されていなかったら、僕もまた彼女を傷つける側の人間になっていただろう。

 僕はじいに感謝してもし足りない。

 例え『運命の相手は一目でわかる』とか『あなたが好きになる人がシンデレラ』だなんて、安請け合いしていたとしても。

 それに、じいの言葉は結局真実になった。

 ジャボット(悪役令嬢)だった彼女は、僕が好きになった人は、今シンデレラ(・・・・・)として僕の隣にいるのだから。

 僕の恩人であるじいはその後年齢を重ね、体の自由があまり利かなくなってきたということを理由に、この城を去った。
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