本能の赴くままに、身を委ねる。
私もあんなふうにキラキラと輝ける女の子になれたらな……。
なんて、叶いもしない願いを思ってしまった。
「……今日もうやってんな、姫華(ひめか)」
「郁人(いくと)。いつからそこにいたのよ!つーか、私の事、名前で呼ばないで!」
誰もいないと思っていた路地裏に。聞き覚えのある声が聞こえた。
振り向くとそこには幼なじみで腐れ縁の大道寺郁人(だいどうじいくと)が苦笑しながら立っていた。
びっくりした私は恥ずかしいやら憎いやらで思わず叫んでしまった。
「なんだよ、今更。お前の名前、呼んだって別に構わねーだろ」
自分の名前を速攻で否定する私。
そのことに不満を持ったのか、くちびるを尖らせながら言葉を吐き捨てた。
「だって、その姫華っていう名前、私には似合わないもの。通り名の『HANA』の方がしっくりくる」
私にはふたつの名前があった。ひとつは姫華という本名。