本能の赴くままに、身を委ねる。
もうひとつは、裏社会で通っている『HANA』という名だ。私には訳あってこのふたつの名があるのだが、家族は誰も知らない。
唯一、昔からの知り合いでこのことを知っているのが目の前にいる大道寺郁人だった。
「……ほら、早くここ離れよう。また巻き込まれるのめんどくさいし」
幼なじみに名前で呼ばれて嬉しいくせに、素直になれない私がいやで。郁人の手を掴みながら、夜の街……繁華街を抜けた。
私たちはまだ高校二年生。
この時間にうろついていたら、警察に捕まる。それだけは避けたくて、急ぎ足で街を出た。
「おい、そんな急いでどこ行くんだよ」
無言で歩く私にイライラしながら聞いてくる郁人。
……そんなこと聞かなくても、郁人が1番よくわかっているくせに。
「決まってるでしょ。SHADOWのアジトよ!」
郁人の質問にため息をつきながら、立ち止まる。家に帰りたくないから、今日は誰にも見つからずにSHADOWのアジトに行きたかったのに。