本能の赴くままに、身を委ねる。
郁人に見つかったせいで、めんどくさい事になってしまった。
「……まさか、お前今日も帰らないつもりか?」
「そうだけど」
私の返事に呆れたため息をつく郁人。なんであんたがため息ついてるのよ。
「昨日も家に帰らなかっただろ?さすがに今日は帰れ。親父さん、心配してるだろ?」
歩き出そうとした時。郁人の説教臭い話が聞こえてくる。
お父さんが私の心配してる……?
冗談じゃない。
自分のことしか考えないあのお父さんが私の事を心配するなんて有り得ない。お母さんもそう。
「郁人には関係ないでしょ。私があの家に帰らなくても誰も気づかないわよ。だって2人とも、夜遅くまで仕事なんだから」
2人とも仕事が忙しくてほとんど家にいることは無い。たまに会うとすれば夜遅くか朝早い時間。
ここ最近は、両親にめっきり会うことは無くなった。
「……関係あるんだよ、バカ」