本能の赴くままに、身を委ねる。

郁人が小さな声で呟いた気がした。


あまりにも小さな声で、よく聞こえなかったけど。次に顔を上げた郁人は、とても真剣な表情だった。



「関係あるんだよ。とにかく、今日はアジトには行かない。親父さんたちも帰ってるだろうから、早く家に戻るぞ。送るから」


「えっ……ちょ、郁人!?何を言ってるの!離して!」



その真剣な表情に驚いていたら、急に家に戻ると言われた。驚いた私は、慌てて郁人の手を振りほどこうとしたけど。


……それは無駄な努力に終わった。



「……もしもし。銀河(ぎんが)か?悪いが姫華を見つけたから、車を頼む。ああ、そうだ。いつもの場所だ。頼んだぞ」



郁人に必死に抵抗しているうちに、スマホを取り出し何やら電話を始める。


その間も私を離すまいと腕をがっちりと掴まれていた。さすがSHADOWの“総長”さま。力の加減がさっき喧嘩したやつと全然違う。


振りほど項としても無理だった。
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