本能の赴くままに、身を委ねる。

「もうすぐ銀河がここに迎えに来る。今日は俺も帰るから、大人しく従ってろ。いいな?」


「……はい」



銀河とは郁人の執事さんの名前。


小さい頃から何度か顔を合わせたことはある。確か強面の人で髪色が金髪の人……。


郁人の幼い頃からの専属執事で、とにかく尽くす人だ。郁人の圧に負け、渋々頷く私。


……なんで、いつもこうなってしまうのだろう。郁人には敵わない。いつも私の行動を先に読んで守ってくれる。



「よし。いい子だ」



大人しくなった私を満足そうに見ると、ぽん、と大きな手を頭に乗せてくる。


優しい温もりが伝わってきて、なんだかとても恥ずかしい気持ちになった。



「いい子ってなによ!気持ち悪いからやめて!」



郁人に撫でられて嫌な訳じゃない。


でも、ほとんど無意識に気持ちとは反対の言葉を話している。こんな自分が嫌になるけど、郁人は笑って私を見ているだけだった。
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop