外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する

1 いらっしゃいませ



 いわゆる育ちって何処に出る? ずばり『靴』だと思う。わたしは彼のビジネスシューズをみてファイルへチェックを入れた。

(ずいぶん高価なものを履いてるなぁ。それにしっかり手入れもしっかりしてある)

「志望動機はーー」

 先ほどから淀みなく質問に応え、採用担当者が若干前のめりになっている。これは内定が出るだろう。

 わたしは面接の補助役を押し付けられただけで人事部じゃない。優秀な人物を探すのはいいが、どちらかと言えば働いている社員の待遇改善もお願いしたいところ。

「配属希望ですか? そうですね」

 どの部署で働いてみたいか? 問いに彼はやや間を置く。
 
(その爽やかな見た目、出身大学からして華の営業部でしょうに)

 即答しないのが演技というか、ベタな謙遜に映る。
 と、彼と目が合う。

「売り場で働きたいです。お客様と直接関わる場所への配属を希望します」

 彼はわたしに向け、にっこり微笑み発言した。

 これがわたしーー深山真琴と花岡一樹との出会いだ。
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