外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する


 販売員はお客様次第で休憩をとる為、ランチが14時を過ぎる事も珍しくない。食券機で日替わりメニューのボタンを押すとやっと一息つけた。

「お疲れ様です」

「あ、花岡君も今から?」

「はい。一緒に食べてもいいですか?」

 頷き、正面の席を促す。彼は微笑むとサラダしか乗っていないトレイを置く。

「相変わらず少食。身体、壊さないでよ? 花岡君は今や売り上げナンバーワンなんだから」

「体調管理はご心配なく、教育指導が行き届いていますので。それより先輩が催事売り場へ応援配置される中、真のナンバーワンとは言えません」

 ドレッシングを掛けず、塩を軽く振る。夜に食事の予定がある時のランチは軽く済ませるそう。友達と飲みに行くのか、デートなのか聞いた事はないもののーー後者だろう。

「教え子が優秀だから催事応援へ駆り出されるの。部長から聞いたよ? 最近は花岡君目当てのお客様も多いって」

「えぇ、有り難いことに。皆さんに可愛がって貰っています」

 高額商品を販売しても奢らず、周囲への感謝も忘れない。まるで絵に描いた販売員、彼の浮かべる笑みはお手本みたくキレイで。
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