外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
(亮太って足の先までカッコいいんだな)

 そんな風に感じるくらい、暗闇に目が慣れる。

「わたし、どうして、ここに?」

「僕には分からない。それより水を飲んだ方がいい。歩けそう? 目が回るなら引っ張ってあげる、ほら」

(そうか、これは夢。亮太に手を引かれて歩くなんて)

「君はーー何ちゃん? 名前教えて」

「ちゃん付けされる歳じゃないです」

「そう? 酔っ払って人の家へ上がり込むなんてガキじゃん? で、何ちゃん?」

「……真琴です」

「オッケー、真琴ちゃんね。うむ、素直でよろしい」

 プロフィール上、亮太は27歳。花岡君といい、わたしより歳下なのにしっかりしている。むしろ自分が落ち着きがない可能性も出てきた。こんなベロベロになるまで飲むなんて……。

 たぶんキッチンへ向かっているんだろうが、なかなか着かない。とにかく部屋が広い。

(夢なんだし、このまま手を繋いだままでもいいか)

「真琴ちゃんは一樹と付き合ってる? あいつが女の子を連れ込むなんて、これまで一度も無かった」

「花岡君とは先輩後輩の関係で、付き合うとかとんでもないです!」

 身振り手振り付きで訂正する際、亮太から手が離れてしまった。
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